crackRoastery
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焙煎機のドラム前面 覗き窓と炎
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Philosophy

焙煎は
聴く仕事

豆は、その日その日で違う。数値のレシピではなく、豆自身が発する声を頼りに、いちばん輝く瞬間を待つ。

01  /  1ハゼ

パチンという音

焙煎機の中で、豆が静かに熱を受けています。緑がかっていた豆は、少しずつ色を変え、香りが立ちはじめる。焙煎士は、その前で、じっと耳を澄ましています。

そして、その瞬間が来ます。一粒がはぜると、それに続いて、パチ、パチパチ、と音が広がっていく。豆の中の水分が蒸発し、内側から膨張して、殻を破る音です。この最初のはぜを、焙煎の世界では「1ハゼ」と呼びます。

この音が鳴るまで、豆は黙っています。そして、この音から先が、焙煎士の本当の勝負です。

トライヤーで抜き取った焙煎中の豆

豆が
はじめて口をきく瞬間

02  /  耳の仕事

数値では表せない
耳の仕事

焙煎というと、火加減を「見る」仕事、温度を「測る」仕事だと思われるかもしれません。もちろん、それも大切です。けれど、いちばん頼りにしているのは、耳です。産地が違えば、水分量も、硬さも、密度も違う。その豆が、いま、どういう状態なのか。教えてくれるのは、豆自身が発する音なのです。

01

ハゼの音が鳴るタイミング

その豆が、いつ最初のはぜを迎えるか。産地や収穫年、その日の状態で、一粒ずつ違います。

02

音の大きさ、密度、勢い

はぜる音の質そのものが、豆の内側で何が起きているかを教えてくれます。

03

音と音のあいだの、間隔

はぜと次のはぜの間合いを聴き分け、豆の声を読み取る。crackという名前は、何を頼りに仕事をしているかの、宣言でもあります。

焙煎を終えた豆を冷却トレイで冷ます
03  /  決断

その数十秒が
すべてを決める

1ハゼが鳴ったあと、焙煎士は、最も張り詰めた時間を迎えます。いつ、火から下ろすか。

十秒早ければ、酸味が立ちすぎる。十秒遅ければ、その豆の持ち味が焦げて消える。同じ豆、同じ火加減でも、下ろすタイミングが数十秒ずれるだけで、味はまったく別のものになります。

しかも、やり直しはききません。一度深く煎ってしまった豆を、浅く戻すことはできない。この一回きりの決断を、音を聴きながら、下し続ける。それが、焙煎士の仕事です。

04  /  責任

三年の時間が
十数分に託される

コーヒーの木は、植えてから実をつけるまで、およそ三年かかります。農家が育て、手で摘み、果肉を取り除き、乾かし、選別する。そして海を渡り、長い旅を経て、ようやく焙煎所にたどり着きます。その、何年もの営みの最後に来るのが、たった十数分の焙煎です。

この十数分で、私たちは、その豆の可能性を最大限に引き出すこともできれば、台無しにすることもできます。焙煎士は、その豆の一生の、最後の責任者です。だからこそ、一回も、気を抜けない。crackが少量ずつしか焙煎しないのは、この責任の重さを知っているからです。